商談で見せるデモを、ダミーデータで一度回した状態まで作る
- 領域
- 営業・商談
- 実行頻度
- 商談ごと(台本は都度追加)
AI活用の商談でいちばん決まりにくいのは、「便利そうだが、うちの仕事で何が変わるのか分からない」という状態です。この事例は、その状態を商談の中で解消するための準備を仕組みにしたものです。
課題
商談で機能を説明すると、たいてい「すごいですね」で終わります。相手の業務に翻訳されていないからです。かといって、その場でお客様の実データを触るのは現実的ではありません。持ち込めませんし、扱いも慎重でなければなりません。
結果として、営業は次のどちらかになっていました。
- 一般的なデモ(文章の要約など)を見せて、業務との距離が埋まらないまま終わる
- その場で即興で動かそうとして、うまくいかずに印象を落とす
やるべきことは分かっていました。相手の業界の、相手が毎月やっている作業を、その場で片づけて見せる。問題は、それを商談ごとに準備する時間がないことでした。
やったこと
業界・企業規模・業務の型ごとに「デモ台本」を作り、営業が商談で画面共有するだけの状態にしました。台本1枚には次のものが入っています。
| 要素 | 中身 |
|---|---|
| 前提 | 業界・規模・デモの型・所要時間(何分で終わるか) |
| 流れの図 | 入力になる3つの資料 → AIが突き合わせる → 出力される成果物 |
| Before / After | いまの手順と、置き換わったあとの手順 |
| 成果物 | 実際に一度動かした結果を図で見せる(工程表・山積みグラフ・リスク一覧など、業務に合う形を選ぶ) |
| 当日のプロンプト | その場で打ち込む指示文。折りたたんで隠してある |
| 入力ダミーデータ | デモに使う架空の資料。同じく折りたたみ |
ダミーデータは、わざと汚しておく
ここがこの仕組みの肝です。ダミーデータは、きれいに整えたものではなく実務でよくある崩れ方を混ぜて作ります。
- 同じ設備・同じ取引先の名前が、資料ごとに違う表記になっている
- 途中の年の履歴が抜けている
- 単位や書式が資料ごとにそろっていない
この状態から始めると、AIが「表記のゆれを同じものとして扱う」「抜けている箇所を抜けていると書く」ところが見えます。整ったデータを整った形で出すデモには、驚きがありません。お客様が毎日相手にしているのは崩れたデータのほうです。
「推測しない」ところまで見せる
成果物には、読み取れなかった箇所を「不明」と書いてあります。金額や数量を推測で埋めないよう指示してあるからです。導入を検討する立場から見ると、できることより「勝手にやらないこと」のほうが確認したい点です。ここを見せるとその不安に先に答えられます。
台本は1か所に集約する
台本が増えると「どれが最新か」が分からなくなります。そこで全部の台本を1枚のページに集約し、業界別・型別に並べ替えられるようにしました。営業に渡すURLは1つだけです。新しい台本を足しても、渡すものは変わりません。
成果
- 商談前のリハーサルが済んだ状態で臨める。台本は一度動かして成果物まで確認したものだけを載せています
- 営業が自分で用意しなくてよくなった。業界を選んで画面共有するところから始まります
- 横展開しやすい。業務の型が同じなら、業界が違っても台本は流用できます。作った台本は現在30件超のデモ案に対して順次追加しています
横に展開するときのポイント
- デモは「機能」ではなく「1つの業務」を単位にする。機能紹介は覚えられませんが、片づいた仕事は覚えられます
- 実データではなく、実データに似せた架空データを使う。持ち出しの問題を避けつつ、リアリティは落とさずに済みます
- 一度自分で動かしてから台本にする。やってみると、プロンプトの指示が1行足りないことに気づきます。その1行が本番の失敗を防ぎます
- 「やらないこと」を見せる設計にする。推測しない・勝手に送らない・伏せる、を成果物の上で見せられると、話が前に進みます